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パソコン・ネットワーク・・・家庭LANを中心に・・・(4)
第4回:ISP接続
1.ADSL接続
2.FTTH接続
3.ADSLとFTTHのサービス形態
4.加入しているISPへ接続される仕組み(PPPoE)
5.まとめ

第4回:ISP接続

 パソコンは、スタンドアロンからネットワーク化され、インターネットに接続され情報の入手や発信ができる通信端末となり、生活に不可欠のツールになりました。 家庭内LANに接続されている家族の皆のパソコンが、「外の世界」即ちインターネットといつでも通信できること(インターネット接続の共有)は必須の機能です。

 インターネットへの接続の方法(インターネット・アクセス)には、
@ 電話回線を用いて、アナログ・モデムによるアクセス
A ISDN回線を用いて、ISDN-TA (Terminal Adapter) によるアクセス
B CATVを用いて、ケーブルモデムによるアクセス
C 電話回線にスプリッタを付け、ASDL (Asymmetric Digital Subscriber Line)モデムによるアクセス
D 光ケーブル(FTTH:Fiber To The Home)を用いて、ONU (Optical Network Unit) によるアクセス
E 無線LANやFWA (Fixed Wireless Access)などを用いて、無線装置によるアクセス
などがあります。ここでは、ブロードバンド・インターネット・アクセスとして広く普及しつつある代表的なADSLとFTTHについて説明します。 

 第1回の冒頭に示しましたが、今回の課題は次のようなものです。
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)の異なる友人宅のLANに繋いでインターネットをする時の設定をどうするか?
LAN内で、複数のISPに繋ぐことができるか?
ノートパソコンを持ち寄って、インターネットを楽しむには、どうしたらよいのか?

 これらの課題に応答することを念頭に、「ISP接続」の仕組みのポイントを解説します。
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1.ADSL接続


 加入電話線を用い、既存の電話サービスをそのままにして、インターネット接続の信号をその上に乗せる方式がADSLで、現在急激に普及しています。ADSL接続の場合、ここに示す様にADSLモデムのインターフェイスにいろいろな形態があります。
ADSLのインターフェース
 USBタイプはパソコンに直接接続する場合で、家庭内LANには適しません。 ブリッジタイプは、[ADSLモデム+ブリッジ]であり、パソコンをイーサネット・ケーブルで直接接続しても、あるいはルータを介してLAN接続もできます。 ルータタイプは、[ADSLモデム+ルータ]であり、LAN接続に最適です。
 ただし、一般的にLAN側のポートが1つしかないので、複数台のパソコンでLANを組むにはハブが必要です。
ADSLのインターフェース表  左表のように他のアクセス・サービスと比較して、ADSLだけが、いろいろなインターフェイスのモデムを提供しています。
 ADSLサービスの提供を受ける場合、PCは、ADSLモデムとスプリッタを介してモジュラージャックへと接続されます。ADSLモデムはPCによるデジタル信号と、加入者線を伝送する際のアナログ信号との双方向変換を行うための機器です。また、スプリッタは、加入者線内の低い周波数である電話信号と、高い周波数のADSLの上りと下りのデータ信号を分離するための装置です。
ADSL回線構成  加入者線は、モジュラージャックから保安器、架空ケーブル、き線点、地下の管路を通り、局内のMDF(Main Distribution Frame)と呼ばれる分配器を介して局内のスプリッタへと接続されます。このスプリッタは、電話信号を電話交換機へ、ADSL信号の場合はDSLAM (Digital Subscriber Line Access Multiplexer) という局内多重化装置(局内ADSLモデム)を介して、ADSL事業者を通り、ISPからインターネットへと接続されます。
 DSLAMでは、アナログ信号として伝送されていたデータをデジタル信号へと変換してISPへと送信されます。ですから、信号がADSLである区間は、加入者のADSLモデムとDSLAM間です。

 ところで、ADSLは非対称デジタル加入者線と訳しますが、なぜ「非対称」なのでしょう。先ず、インターネットの通信の流れは、一般的にユーザから見て下り(ダウンリンク)が上り(アップリンク)に比べ、圧倒的に多いのです。わかり易い例が、あるウェブサイトにアクセスして情報を見る場合、様々な情報を載せたウェブサイトの情報がダウンリンクを流れてきます。その時、アップリンクは何も通っていません。このように双方向で非対称のトラフィックの場合が多いと言えます。 そこで、電話加入者線の高い周波数部分を有効に使い、ユーザに最適な通信を提供するためにADSLという方式が導入されたのです。この他にも、電話加入者線をデジタル化する方式はいろいろあり、一般に xDSL と呼称しますが、
VSDL (Very high speed Digital Subscriber Line):ADSLより距離は短いが高速の非対称の方式。マンション向けのFTTHで、各戸への接続に使われています。
SDSL (Symmetric Digital Subscriber Line):対称の方式
HDSL (High data rate Digital Subscriber Line):対称の方式。SDSLがユーザ宅用であるが、これは電話局間で使われているものです。
IDSL (ISDN Digital Subscriber Line):ISDNも一種のデジタル加入者線なので、こう呼ぶ人もいますが、もはやブロードバンドの仲間には入れられないので、皮肉な呼称と言えます。
などがあります。

 ADSLサービス合戦は、まだまだ盛んで、技術的にも高速化が進んできました。代表的なADSLサービスのフレッツADSLとYahoo! BBを右表に示します。

ADSLのサービス
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2.FTTH接続

 FTTHの場合は、新たに自宅に光ケーブルを敷くことになります。(余談: 光ケーブルの個人宅への敷設は歴史的なことです。と言うのは、1876年に電話機が発明されてこの方、電話線が各家庭の通信回線を百数十年も「独占」してきましたが、遂にそれが崩れ、より快適なブロードバンド通信回線として光ケーブルが今後は中心になろうとしているからです。)ADSLでは既存の電話線を用いるので通信速度に限界がありますが、光ケーブルの場合、非常早い通信速度まで実現できます。

FTTH回線構成  FTTHの回線構成は、NTTの場合を例で図解すると左図のように、SS方式(加入者宅まで1本の光ケーブルが引かれる方式)とPON方式(複数の加入者宅に最寄の電柱から分岐される方式)に分かれます。SS方式の方が1本の光ケーブルで最寄局までつながるのでデータ速度が速く、PON方式では32分岐まで可能とのことですが、実際はまだそれほど分岐されていないようです。加入者の密度が上がると、分岐が増え、速度が落ちるということになるかも知れません。NTTのBフレッツ・ニューファミリタイプではPON方式が採用されており、筆者宅もこのサービスに加入していますが、最寄電柱の分岐はまだされていないとのことです。
 100Mbpsを提供すると言うメニューですが、実際は工事の際にONUからNTTの高速サーバ間での測定で50Mbps程度、家庭内LANからインターネットのスピード測定サイトで測定すると最新のパソコンで20Mbps(上り下りとも)位です。

 現在、FTTHの幾つかのサービスで採用されている方式は次の通りです。

事業者

サービス

方式



事業者

サービス

方式

NTT東西

Bフレッツベーシック

SS


有線ブロードバンド・ネットワーク

マンション

SS

Bフレッツマンション

SS


ホーム

SS

Bフレッツニューファミリ

PON


中部電力

コミュファ・ホーム

PON


 FTTHサービスはマンションでの導入が盛んで、不動産の付加価値としても位置付けられています。新築のマンションならば、各戸へ光ケーブルを敷設するケースもあるかも知れませんが、それには費用がかかるので、共用型が多いようです。NTT東日本のBフレッツサイトによると、棟内にLAN配線がある場合(LAN配線方式)、LAN配線がない場合には既存の電話配線を用いて各戸まで接続する方式(VSDL方式)および電柱等から各戸まで無線で接続する方式(ワイアレス方式)があります。
FTTHの回線例 このうちの左図のようなワイアレス方式はまだあまり導入されていないようですが、棟内の配線を不要とし、設置が容易であり、高速回線を提供できる等のユニークな特徴を持っています。
http://flets.com/misc/prom_b-mansion.html#3 参照)
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3.ADSLとFTTHのサービス形態

 ADSLとFTTHとも、いろいろな事業者の宣伝が多く、迷うところです。 アクセス回線事業者とISPとの関係により、サービス形態を別けると、「フレッツ型」、「ホールセール型」、「一体型」に分類できます。

   

フレッツ型

ホールセール型

一体型

サービス形態

回線とISPが完全に別

ホールセール事業者がISPに回線を卸売り

回線とISP同一事業者が提供

回線
事業者
およびホールセール事業者

ADSL

NTT東西(フレッツADSL

イー・アクセス
アッカ・ネットワーク

ソフトバンクBB
Yahoo! BB

FTTH

NTT東西(Bフレッツ)
中部電力

(アクセスコミュファ)



[主にNTT系]

東京電力
TEPCOひかり)



[主に電力系]

有線ブロードネットワークス
BROAD-GATE 01
ケイ・オプティコム
eoホームファイバー)
中部電力(コミュファ)
[独立系]

ISP

多くのISP有り

@niftyBIGLOBE
So-net

申込みや料金支払い

回線とISPで別々

ISPが対応

事業者が対応

プロバイダーの変更

回線はそのままで変更可能

回線の変更も必要

回線の変更も必要

複数ISP選択

不可

不可


サービス形態による回線構成  3つのサービス形態による回線構成を左図に示します。

 ISP選択の自由度があるのが「フレッツ型」ですが、料金は回線事業者とISPの両方へ払うので割高感があります。

 「ホールセール型」や「一体型」では、回線事業者とISPがセットの契約であるので、料金支払いは一箇所で格安になっているものがあります。ただし、後からISPを変更する場合は回線も契約し直さなければなりません。 「フレッツ型」では回線はそのままで、ISPの変更は可能です。
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4.加入しているISPへ接続される仕組み(PPPoE)

 家庭内LANがイーサネットを基に接続されており、それが玄関(ルータ)から公道(最寄り電話局までの加入者線)へ出るには靴や服(物理層やプロトコール等)を替えなければなりません。また、インターネットへ入る(接続する)には、インターネット・サービスを提供する業者(プロバイダー)に費用を払いインターネットへの「入門証」(IDとパスワード)を得て、接続のたびにそれを示して、認証を受けなければなりません。
ISP接続  従来のアナログ電話やISDN回線を用いるアクセスでは、ダイヤルアップが「物理層」の接続のプロトコールとして使われ、その上の「データリンク層」ではPPP (Point to Point Protocol)という2地点間で通信するためのプロトコールが使われています。さらに、その上にTCP/IPなどのプロトコールを動作させ、IPアドレスの自動割り当てやユーザ認証などの機能を持つものです。 このPPPプロトコールをイーサネット上で利用するプロトコールPPPoE (PPP over Ethernet) が開発され、今やADSLやFTTHでのアクセスで広く使われています。ADSLのPPPoE使用の場合、家庭内LANとISPの間は、物理的にはイーサネット、ADSLモデム、電話回線などを介して接続されます。

 一方、ネットワーク・プロトコル的には、家庭内LANとISPの間でPPPによる通信が行われます。これにより、ISP側では、ダイヤルアップのPPPとADSLのPPPoEとを統合でき、運用しやすいというメリットがあります。上図の示すように、ユーザ側をPPPoEクライアントとし、通信事業者側の加入者管理装置(BAS:ブロードバンドアクセスサーバとも言う)がPPPoEのサーバとして機能する方式です。この加入者管理装置で、多くの加入者のユーザ名とパスワードをチェックすることでユーザを特定することができ、ユーザに対して指定されたISPに接続したり、ユーザ毎のバンド幅(データ・スピード)の提供で差別化したり、ユーザ毎のセキュリティチェックが可能となります。

 このPPPoEによるISP選択機能により、ユーザは入力するユーザ名とパスワードを変更することにより接続先のISPを変更することができます。最近のブロードバンドルータはほとんどPPPoE機能を搭載しています。また、PPPoEソフトウェアはADSLやFTTH事業者が利用者に配布するし、Windows XPにも標準搭載されています。

 これまでの説明で、今回の課題に答えましょう。
 先ず、「プロバイダーの異なる友人宅のLANに繋いでインターネットをする時の設定をどうするか?」ですが、友人宅にはLANがあり、ルータを介してインターネットにつながっているとします。そこで、自分のパソコンLANの設定(IPアドレス、ゲートウェイIPアドレスの割付)をし、そのLANにつなぎます。そうすると、「ルータ」が「インターネット接続の共有」機能を発揮してくれますから、インターネットに接続できます。自分のISPと友人のISPが異なるので、自分のISPのメールボックスには接続できない場合が一般的でしょう。しかし、Webメールやインターネット上に開かれているメールサーバのアカウントを持っていればメールもできます。アクティブSITA会員のメール @active-sita.com はこのような場合でも使えます。

 次に、「LAN内で、複数のプロバイダーに繋ぐことができるか?」ですが、ルータを介して、PPPoEを使用していれば、契約している複数のISPから付与されているIDとパスワードを、PPPoEの設定変更で可能と説明しました。それは、しかしサービス形態が「フレッツ型」の場合に限ります。さらに、同時に複数ISP接続が可能か(つまり、家庭内LANで、お父さんのパソコンからはXというISPに、お母さんのパソコンからはYというISPに接続できるか)というと、「フレッツ型」ならば可能な場合があります。 「フレッツADSL」では、同時接続セッション数(一つのフレッツADSL契約で、同時に接続できるプロバイダーの数)を2セッションとしているので、2つのISPと同時接続できます。それには、ルータがPPPoEマルチセッションとかマルチPPPoE対応であることが必要です。Bフレッツの場合、個人用の「ニューファミリタイプ」では同時接続セッション数は1つなので、設定切替しかできません。「ベーシックタイプ」なら、4つのセッションの同時接続が可能ですが。
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5. まとめ

 インターネットへの接続が、どこでも、いつでも、容易にできる環境、所謂ユビキタスな環境が徐々に整備されつつありますが、「ノートパソコンを持ち寄って、インターネットを楽しむには、どうしたらよいのか?」という課題が寄せられたように、まだ公共の場で、例えば、どこかの集会場で容易にインターネット環境があるかというと、まだまだですね。

簡易なインターネット環境  例えば、左図のようにADSL加入されていて、1台のパソコンで無線LANを管理している環境があれば、参加者は無線LANで「インターネットを楽しむ」ことができます。設備費は簡易パソコンと無線LANのアクセスポイント(AP)で10万円以下、経費は月5千円位でやっていけると思います。 

 米国では、日本でも一部では、いろいろな学会や会議の会場ではこのような(もう少し専門的なのでしょうが)環境になっており、参加者は自分のパソコンを持参し、会議でサーバに無線LANでアクセスし、会議資料を各自でパソコンに取り込み、会議に参加しています。

 ホットスポットという公衆の場(ホテルロビー、ファスト・フード店、駅、空港など)でのサービスも導入されていますが、さらにそれが公共の場である集会場などで導入されることを願っています。脇道に反れますが、NPOのアクティブSITAとして、そういう場を作る運動をして、そこの運営を引き受けてもよいのではないでしょうか。
 
 次回は「ネットワーク・セキュリティ」というテーマでお会いしましょう。では、それまでお元気で。


参考資料
[1] ‘プロバイダの実体’日経NETWORK 2004.4月号 日経BP社
[2] ‘FTTHの最新技術を知る’ 日経NETWORK 2004.6月号 日経BP社

(第4回終り)

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